コンタクトレンズをインターネットで購入する方が増えています。手軽に購入できる利便性やその価格の魅力は、十分に理解できます。しかし、それ以上に安全性について懸念しています。自身の健康を自分で守ることの重要性について、この記事では、インターネットでのコンタクトレンズ購入の背景と、消費者教育の現状とその形骸化を詳しく解説したいと思います。
*上記のようにコンタクトレンズはメーカーやブランドによって形状が違います。
度数・ベースラインだけで、自分の目に合ったものが選べるわけではありません。
コンタクトレンズがインターネットで購入できるようになった理由
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eコマースの普及と消費者ニーズの変化
インターネットの普及により、オンラインショッピングが一般化し、コンタクトレンズの購入も手軽になりました。忙しい現代人にとって、家から簡単に注文できるオンライン販売は非常に魅力的です。
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規制緩和と市場の変化
1997年の規制緩和により、医師の処方箋がなくてもコンタクトレンズを購入できるようになりました。これにより、オンラインや雑貨店、ドラッグストアでの販売が広まりました。
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美容目的のビューティーレンズの台頭
美容目的で使用するカラーコンタクトレンズやサークルレンズの市場シェアが急速に拡大しています。これらのレンズは、特に若年層の女性に人気があります。
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市場の拡大とメーカーの責任
コンタクトレンズの市場は、少子化による若年層の減少にもかかわらず、成長を続けています(参考1)。これは、インターネットや雑貨店での販売チャネルの拡大が寄与していると言えます。特にインターネット販売は、コスト削減と手軽さから大きな成長を遂げています。
コンタクトレンズはメガネよりも低く、1枚の原価が5円から高くても30円程度と言われており、原価率は化粧品並みと予測できます。ただし、パッケージ代、管理費、販売費、諸経費、税金などが上乗せされます。高度管理医療機器として高品質のレンズを衛生的に生産する工場管理、新たな製品を開発する研究費などがかかります。
メーカーや販売者は市場拡大を目指してインターネットや雑貨店での販売を推進していますが、消費者の健康についての配慮が十分であるかは疑問が残ります。法規制に基づいた添付文書の記載を徹底するだけでなく、消費者が自ら健康を守るための知識を持つことが重要です。
現状の問題点
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消費者教育の形骸化
多くの情報が一方的に提供されるだけで、消費者が実際に理解し、行動に移しているかどうかが確認されていません。定期的なフォローアップや実地指導が不足しているため、教育が形だけになっている場合があります。
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インターネット販売の限界
インターネット販売では、対面での説明がなく、消費者が自分で情報を読むことが前提となるため、正しく理解していない可能性が高いです。説明文書や動画が存在しても、消費者がそれを読んだり視聴したりしないことが多いです。
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若年層の理解不足と危機管理
若年層のコンタクトレンズユーザーは、「自分は大丈夫」という思い込みが強く、危機管理意識が低い傾向があります。知りたいことしか知ろうとせず、必要な知識を求めないため、正しい情報にアクセスしていない場合が多いです。また、眼科医会やコンタクトレンズ学会、厚生労働省が行う動画配信、キャラクター作成、ポスター作製などの取り組みが若年層に届いていない現状があります。
形骸化の実例
POSデータやアンケート調査によると、消費者が説明を受けたと感じているものの、実際の使用方法や手入れ方法に誤りが多いことがわかります。また、定期検診を受けていない消費者が多く、説明が消費行動に結びついていない現状も浮き彫りになっています。
消費者教育の改善策
自発的な学びの促進
若年層が自ら知識を求めるようにすることが重要です。彼らが健康リスクを認識し、自分自身の健康を守る必要性を理解するための教育が求められます。
若年層に届くアプローチ方法の模索
若年層が関心を持ちやすい情報提供方法や媒体を通じたアプローチを模索します。SNSやインフルエンサーを活用した情報発信、インタラクティブな学習ツールの導入などが考えられます。
厚生労働省の通告とガイドライン
厚生労働省は、おしゃれ用カラーコンタクトレンズも高度管理医療機器として扱うことを通告し、適正使用と情報提供の徹底を呼びかけています。これにより、カラーコンタクトレンズの製造・販売には厳格な規制が適用されています。
当院の取り組みと方針
当院では、一般的なコンタクトレンズの販売は行わず、治療目的での取り扱いを行っています。正しい矯正、フィッティング、酸素透過度、使用法とケアの重要性を重視し、患者教育に重点を置いて診察しています。
結論
安全にコンタクトレンズを使用するためには、適切なフィッティングと装用やケアの知識が不可欠です。消費者教育の現状と課題を理解し、実効性を高めるための取り組みが求められます。若年層が自身の健康を守るために必要な知識を積極的に求め、賢くなってほしいと望みます。
(参考1)2022年コンタクトレンズ・ケア用品市場動向
GfK Japan 09.03.2023
- 全体的な市場成長: 2022年は大型連休を含む月で特に販売が伸び、外出制限の解除が市場にプラス影響。
- 製品タイプ別動向:1日使い捨てレンズ: 金額前年比11%増シリコンハイドロゲルレンズ: 金額前年比14%増、金額ベースでの構成比50%以上
カテゴリ | 販売金額 | 前年比 | インターネット販売 | 店頭販売 |
コンタクトレンズ | 3,486億円 | 10%増 | 15%増 | 5%増 |
2年連続二桁成長 | 外出需要の増加による回復 |